副業なら個人事業から始め、法人は条件がそろってからにする
運営者の時計店 Timeseek(timeseek.net)を運営する立場からも、副業で始めるなら個人事業を勧めます。運営者の店も初年度は、毎月かかる固定費と、仕入れや販売の失敗で商品ごとに出た損失で赤字でした。
本業の給与・初年度の見込み・帳簿・取引先の4つで、始め方の目安が出る
この記事の判定で、本業の給与・初年度の見込み・帳簿・取引先の4つを選ぶと、どちらで始めるかの目安が出ます。4つの見方は次のとおりです。
- 本業の給与: 給与所得があれば、副業の損失と通算する相手がある
- 初年度の見込み: 売れた商品の仕入れ値(売上原価)と、送料・手数料・道具などの経費の合計が売上を上回ると、損失が出る
- 帳簿: 会計ソフトで銀行とカードを連携し、月に一度は取引を仕分けられるか
- 取引先: 仕入れ先や卸先に、法人でないと取引しないところがあれば、法人を比べる
中古品を仕入れて売るなら、古物商許可も要ります。申請は個人でも法人でもできます。申請先と書類は小売と業販の記事にあります。
初年度の見込みを立てるときは、支払った額のうち、その年の経費にならないものがある点に気をつけます。
| 支払ったもの | その年の経費になるか |
|---|---|
| 年末に売れ残った在庫の仕入れ値 | ならない。仕入れを増やしただけでは赤字にならず、帳簿の上の赤字と手元のお金の減り方は同じ動きをしない |
| 10万円以上の道具 | 原則として減価償却で、数年に分けて経費にする |
| 40万円未満の道具(一定の要件を満たす青色申告者) | 使い始めた年に経費にできる特例がある。令和8年3月31日までの取得は30万円未満。年の合計300万円まで |
損失を給与と通算できるのは、事業所得として申告できるときだけ
| 所得の区分 | 損失を給与と通算できるか | 当たる目安 |
|---|---|---|
| 事業所得 | できる | 活動が社会通念上、事業と称するに至る程度に行われている |
| 業務に係る雑所得 | できない | 副業による営利目的の継続的な収入。取引を記録した帳簿書類の保存がないと、原則としてこちら(収入金額が300万円を超え、かつ事業所得と認められる事実がある場合を除く) |
- 前々年分の業務に係る雑所得の収入金額が300万円を超える場合は、現金預金取引等関係書類の保存が要る
- 継続して売り、帳簿を付け、在庫と売上を記録しておくと、事業の実態が記録として残る
- どちらに当たるかは個別に判定される。自分の場合は、税理士か税務署に聞いて決める
給与があり帳簿を付けられるなら、個人事業で始める
上から順に当てます。最初に当たった行で止めます。
| 条件 | 判定 | 次の行動 |
|---|---|---|
| 仕入れ先や卸先が法人を求めている | 法人を検討 | 相手の条件を文書で受け取ってから、合同会社か株式会社を比べる |
| 本業の給与があり、初年度は損失の見込み。帳簿は付けられる | 個人事業で始める | 開業届と青色申告承認申請書を出す。会計ソフトで銀行・カードを連携する |
| 帳簿を付ける自信がない | 個人事業で始めるが、先に会計ソフトを決める | 銀行とカードの連携で仕分けが自動になるソフトを選ぶ(比較は下) |
| 利益が安定し、法人の方が税で有利と税理士が言った | 法人成りを検討 | 個人事業を廃業して法人へ移す手順を税理士と組む |
| 事業の実態(継続・帳簿・在庫記録)を作れる見込みがない | 雑所得として申告 | 損失の通算は使えない前提で始めるか、実態を作れる規模になるまで待つ |
副業の損失30万円は、事業所得なら給与と通算できる(例)
給与所得400万円の会社員が、副業のネット販売を始めた初年度の例です。試算のための例です。実在の人の数字ではありません。
| 項目 | 事業所得として申告できる場合 | 雑所得として扱われた場合 |
|---|---|---|
| 副業の売上 | 60万円 | 60万円 |
| 売れた商品の仕入れ値と、送料・道具などの経費(道具はどれも10万円未満) | 90万円 | 90万円 |
| 副業の所得 | 30万円の損失 | 30万円の損失 |
| 給与所得など他の所得からの控除 | できる | できない |
| 総所得 | 370万円 | 400万円 |
開業届も青色申告の申請書も無料で、会計ソフトの機能で作れる
個人事業の開業に、お金はかかりません。届出は二つ。開業届と同時に青色申告承認申請書を出すのが一番簡単です。
| 書類 | 出す先と期限 |
|---|---|
| 開業届(個人事業の開廃業等届出書) | 税務署へ。事業を始めた日の属する年分の確定申告期限まで |
| 青色申告承認申請書 | 1月16日以後に開業した場合は開業日から2か月以内。過ぎると、その年は青色申告の特典が使えない |
- 書類は税務署の窓口でももらえる。会計ソフトの無料の開業届作成機能で作る方が早い
会計ソフト3社の、無料で書類を作れる機能です。
| 作成機能 | 無料の範囲 | 作れる書類 | 提出 |
|---|---|---|---|
| freee開業 | 無料 | 開業時の届出書 | 電子申告に対応。運営者はこれで書類を作り、e-Tax で出した |
| マネーフォワード クラウド開業届 | 登録から書類作成まで | 開業届、青色申告承認申請書、青色事業専従者給与の届出など | 電子申告には、マネーフォワード クラウド確定申告アプリとマイナンバーカードが要る |
| 弥生のかんたん開業届 | 登録から書類の作成、印刷まで | 開業届、青色申告承認申請書、給与支払事務所等の開設届出書など5つの届出 | 税務署へ郵送するか、窓口に持っていく |
- どれを使っても構わない。出したあとの会計ソフトの契約とは別
青色申告特別控除の額は、申告の仕方で変わります。
| 年分 | 青色申告特別控除 |
|---|---|
| 2026年分まで | 電子帳簿保存か e-Tax での申告なら65万円、紙で出すと55万円、簡易な帳簿なら10万円 |
| 2027年分から(令和8年度税制改正の大綱) | e-Tax での提出を条件に55万円を65万円へ、優良な電子帳簿の保存などを条件に65万円を75万円へ引き上げる見込み |
- 会計ソフトで銀行とカードを連携しておけば、65万円の条件を満たす帳簿は自然にできる
個人事業は開業届だけで始められ、法人は設立の費用と登記が要る
| 条件 | 個人事業 | 合同会社 | 株式会社 |
|---|---|---|---|
| 始める手続き | 開業届を税務署へ。無料 | 定款と登記。登録免許税(資本金約858万円未満なら6万円)などがかかる | 定款の認証と登記。登録免許税(資本金2,143万円未満なら15万円)と認証の実費がかかり、合同会社より費用が多い |
| 損失が出た年 | 事業所得なら他の所得と通算。青色なら3年繰越 | 法人の損失は法人の中で繰越。給与側とは通算しない | 同左 |
| 帳簿と申告 | 会計ソフトで自分でできる。青色で最高65万円控除 | 法人税の申告。多くは税理士に頼む | 同左 |
| やめるとき | 廃業届を出す | 解散と清算の登記 | 同左 |
| 取引先の見え方 | 個人名。卸先によっては法人を求められる | 法人名で取引できる | 同左。信用面ではもっとも通りやすい |
- 税率と税額は、この表では比べていない。法人の方が税で有利かは、税理士に試算してもらう
会社を作る場合の費用の目安です。金額の多くは登録免許税です。
| 設立の方法 | 合同会社 | 株式会社 | 定款の費用 |
|---|---|---|---|
| 弥生 起業・開業ナビ(かんたん会社設立、電子定款) | 約6.5万円 | 約17.2万円から | 専門家による電子定款の作成かオンライン申請の利用料0.5万円(弥生会計 Next を年契約すると弥生が負担)。登録と書類作成は無料 |
| 自分で一から(紙の定款) | 約10万円 | 約20.7万円から | 紙の定款の印紙代4万円 |
| 専門家に依頼 | 約16万円 | 約26.7万円から | 0円。ただし報酬が10万円ほど加わる(司法書士の報酬アンケートの平均値) |
- 株式会社の額には、定款認証の実費(1.7万円から。資本金などで変わる)が入っている
会計ソフトは、料金より銀行・カード・売り先との連携で選ぶ
決め手は連携です。会計ソフトは、使っている銀行とカード、売り先のネットショップと自動でつながるかで選びます。
運営者は開業のときに弥生も検討したうえで freee を選び、いまも freee を使っています。確定申告の負担が減った実感があります。
個人向けのいちばん安い段の料金です。
| 会計ソフト | 個人向けのいちばん安い段(税抜) | 無料の開業届作成機能 |
|---|---|---|
| freee会計 | スターター 年払い980円/月(月払い1,780円) | freee開業 |
| マネーフォワード クラウド | 確定申告のパーソナルミニ 年払い900円/月(月払い1,280円、2026年12月1日から1,680円) | マネーフォワード クラウド開業届 |
| 弥生シリーズ(やよいの青色申告 オンライン) | セルフ 2年目以降の年額11,800円(2027-03-15までの申込は初年度無料) | 弥生のかんたん開業届 |
- freee とマネーフォワード クラウドの違いは小さく、画面の好みで選んで構わない
- やよいの青色申告 オンラインは低価格。法人化を見据えるなら、同じ弥生に法人向けの弥生会計 Next がある
- 詳しい比べ方は会計ソフトの選び方にある
個人事業で始めるか、取引先の条件があれば法人を比べる
- 個人事業で始める: 会計ソフトの無料の開業届作成機能で、開業届と青色申告承認申請書を作って出します。ソフトの契約は、銀行とカードを連携して1か月分を仕分けてから決めます
- 法人で始める: 取引先の条件を文書で受け取ってから、合同会社か株式会社を税理士と比べます。設立の書類は、弥生のかんたん会社設立のような無料のサービスでも作れます(費用は上の表)
- 迷う場合: 運営者への有料の相談も用意しています(受付は準備中。税務の個別判断はしません)
口座を分け、開業届と申請書を出し、最初の月から仕分ける
- 事業用の銀行口座とカードを、私用と分けて用意する
- 会計ソフトの無料の開業届作成機能で、開業届と青色申告承認申請書を作り、税務署へ出す。青色は開業から2か月以内
- 会計ソフトに事業用の口座とカードを連携し、最初の月の取引を仕分ける
- 中古品を扱うなら、主たる営業所の所在地を管轄する警察署へ古物商許可を申請する(申請先と書類は小売と業販の記事)
- 年末に、売上・仕入れ・経費・在庫を帳簿で見直し、事業の実態が記録として残っているかを見る
- 確定申告は e-Tax で行う。65万円控除の条件になる
元に戻す方法は、個人事業なら廃業届を出すだけです。法人にしたあとで個人事業へ戻すのは手間が大きいので、法人成りは利益が安定してからにします。